知らないところで出版革命が起きている

香りの森
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  お問合メール

資金ゼロ、自分でワープロしたものが、数日で世界中で紙の本として出版できる、こんな革命が知らないうちに始まっています。

最近は電子出版が何かと話題になっていますが、私はそれはたいしたことないと思います。なぜなら、電子デバイス上の本と、紙の本は結局の所、住み分けが起こるからです。お互いに、落ち着くところに落ち着くと思います。しかし現実には、あまりマスコミに取り上げられることのない Print On Demand (POD) による出版というのが、本来の出版革命として、淡々と進んでいることをご存知でしょうか?

現在、日本のアマゾンでも、紙の書籍とKindleの両方の出版が、無料で出来るようになっています。この記事に書かれている米国Amazonと同じような事が出来るようになりました!!

 

古くは「オンデマンドプリント」

オンデマンドプリント:最初に「マイホーム・レイキ」を出版しようとした2008年には、すでにこういう言葉がありました。これは、書籍のようにオフセット印刷をするのではなく、コンピューターにつながったプリンターで印刷して、簡易製本して、少数部数の本を作る方法でした。「マイホーム・レイキ」の試作には、このオンデマンドプリントを使って、最初に10部、さらに200部、と作りました。

このオンデマンドプリントは、かなりの費用がかかります。200部作ったときでも原価は1000円位かかりますから、かなりの出費になります。しかも、自動的に売れるわけではなく、生徒さんに買ってもらうための宣伝、発送、集金ぜんぶ自分でやらないといけません。

出版社の書籍

出版社というのは、利益をしっかり出さなければ行けませんから、原稿持って行って、これ出版して下さいっていっても、簡単には出版してくれません。また、大まかにOKでも、出版社が知る消費者の動向に合わせた変更や校正も必要になってきます。さらに、入稿してもすぐに本になるわけではなく、数ヶ月はかかります。ですので、自分で原稿が完成して出版したいと言っても、運良くスムーズに行っても、本になるまでには半年はかかってしまいます。

電子書籍

そして、電子書籍の時代が始まりました。これはAndroidやiPhoneが普及して、スマホやタブレットを皆が使うようになったためです。これは作るほうとしてはかなり楽ちんです。初期費用は完全にゼロです。AmazonのKindleのシステムはユニバーサルなので、一つのファイルを入稿すれば、全世界同時に販売が始まります。これまでと比べれば画期的です。入稿のインターフェイスの出来は、あまり芳しくありません。分かりにくいし、反応が遅いし。また、米国ベースなので税金の処理が面倒になっています。そして、最大の問題は、結局の所、電子書籍というものを実用的に使っている人は、一握りの人達だということです。漫画などは、かなりの電子書籍の需要があるようですが、一般の本を電子デバイスで読もうという人は、かなり限られてきます。Kindleで出版してみて、「やっぱり、本は紙だ」と改めて感じました。

Print on Demand (P.O.D.)

ここで登場してくるのが、POD(Print on Demand)です。これは先に出てきた「オンデマンドプリント」とは、物理的なプロセスは同じですが、実態が違います。つまり、本を販売するAmazonなどの(ネット)通販店が中心となり、PDFファイルを入稿してもらって、その都度一冊の物理的な本を作成して、Amazonが発送、集金してくれる。著者は入稿するだけです。つまり、自分が出版したい本の原稿さえ出来ていれば、数日で物理的な紙の本が、いろいろな世界の国で同時に購入可能になるのです! 初期費用は完全にゼロか、かかっても1万円以下。ISBNだってもらえます。書店には並びませんが、本をAmazonで多く購入する人は五万といます。これって、これまでの出版の方法と比べると超超画期的だと思いませんか?

PODは書店には並ばない、宣伝は全部自分でやらないといけない(出版社は当然ある程度宣伝してくれます)、著者の勝手な思い込みで出しているから売れるかどうかも全く不明、もしかしたらゴミを増やしているだけかも知れない、いや大部分のPOD書籍はゴミ同然なのかも知れない ーーー しかしこれは本を出す側にとっては、天と地がひっくり返るぐらいの違いがあります。

POD事情 ー 日本と米国

残念ですが現在の所、このPODの事情は、ご本家アメリカと日本では、大きく異なります。アメリカでもAmazonがPODを始めたときは、出版業界に激震があったようです。日本では、AmazonのPODは制限があります(ソフトランディングを狙っているのでしょうか?)。

日米のPOD比較
 米国日本
窓口一括(CreateSpace)中間業者
入稿方法オンラインで1種類業者でまちまち
入稿プレビューありなし
初期費用完全無料5千円~10万円
改版費用完全無料5千円~10万円
カラー印刷普通に可能不可
本の綴じ左のみ左右可
印税設定価格による10-12% 業者で違う
入稿→販売1-2日10日位
販売経路米、英国、ユーロ圏など日本
売上モニターほぼリアルタイム四半期に一度(T-T)
割引Amazonが勝手に割引はなし
認知度全Amazonユーザー知ってる人だけ
情報多数少ない

最大の違いは、米国の場合はAmazon傘下のCreateSpaceという会社が、POD窓口を一手に引き受けています。Amazon自身がその入り口を作っていますから、認知度も高い。専業の業者が運営しているのでインターフェイスが非常にしっかりしています。ですから、まったく極く一般のどんな人でも気軽にCreateSpaceに登録して、PDFファイルを入稿すれば出版できます。
ところが、日本ではアマゾンはPODを直接宣伝してませんし、中間業者の紹介もしてません。日本アマゾンで、PODしたくても、一般の人がアクセスできる窓口がありません。これが超驚き!! なんか隠れて運営している感じです。なんと自分でネット検索してPODしてくれる中間業者を探さなければなりません。日本アマゾンが、中間業者を教えてくれるわけではないのです。利用者をバカにした、何ともオカシイ話ですよね(O_O)

また、担当者の質が大幅に違います。米国AmazonのCreateSpaceは、とにかくレスポンスが早いです。時差がありますが、基本的にその日に返事を送ってくれます。隅々までProfessional。しかし、日本の中間業者は、これは私が使っているところがたまたまなのかも知れませんが、時にはレスポンスに数日かかるときも有り、ユーザーが軽視されている感が否めません。

米国Amazonでは、KindleやPODを使った自己出版に関する本が沢山でいて、普通の一般の人が出来るだけ簡単に出版できるように道筋が立てられています。ところが、日本アマゾンでは、情報がしっかり開示されていなくて、一般の人には分からないようになっています。これは、出版社との関係が悪化しないようなやむを得ない措置なか、日本のアマゾンがやる気がないのか、分かりませんが、大変に残念な状況だと思います。

また、現在の日本アマゾンでは、売り上げの集計が四半期に一度という、まったく冗談みたいな頻度でしか分かりません。何考えてんだか、ホントに。米国Amazonでは、ほぼリアルタイムで売り上げがモニターできます。

米国Amazon :入稿すると翌日にはプレビューできる
米国Amazonプレビュー

米国Amazon :外観の3Dも表示できる
米国Amazon本外観

 

米国Amazon :完了すると欧州/UKでも出版
 米国Amazon完了

現在、米国アマゾンの唯一の問題は、右綴じに対応していないことです。日本語も縦書きも、全くOKなんですが、本の右側で綴じることが出来ません。これには最初参りましたが、入稿するPDFファイルで、ページの順番を全部逆転させることで解決しました。つまり、最初のページを最後に持ってきて、最後のページを最初に持ってくるのです。つまり、縦書きの本を後ろ側から見て読む形にします。
販売ページ但し、こうやっても表紙の問題が残ります。普通に縦書きを入稿すると、本の裏側が表紙として登録されてしまい、バーコードも表紙に配置されてしまいます。私の場合は、裏側のデザインにもタイトルを入れました。バーコードは、担当者が配慮してくれて、本来の裏側に配置してくれました。結果、この本のAmazonのページはこんなことになっています(T-T)

日本の中間業者

今のところ、日本の中間業者は、米国AmazonがPODを始めた意図とは、違う形でこのPODを扱っていると言えます。日本アマゾンで「オンデマンド (ペーパーバック)」と検索するとPOD本が出てきますが、その出版社を見ると、中間業者として以下の様子が見えてきます:

【分類1】本来の米国Amazonの意図をくんで、PODをごく普通の人が使えるようにしてある業者。これは、大変残念ですが現在、MyISBN一社に限られているようです。オンライ入稿できるのもMyISBNだけのようです。MyISBNは費用的には、5,400円と日本の中では破格です。

【分類2】PODや電子書籍中心に出版しているが、始めるに当たっては担当者と相談してゆかなければならないもの。費用的には、数万円~10万円です。まあ、一昔前の自費出版よりは安いかなという感じでしょうか。

【分類3】いい作家を発掘して、出版・宣伝までプロデュースしてゆこうとするもの。何でも面倒見てくれる代わりに、金額は50万円とか、個人で簡単に出せるお金では無くなっています。もちろん、業態としてそれを否定するわけではありませんが。

【分類4】これまでの中小の出版社が、従来の出版の延長として出しているものです。コマブックスや日本評論社などがあります。

この様に現状では、日本の出版界では、本来のPODの在り方とは違うアプローチがなされています。もともと、米国Amazonのように手数料完全無料にしてしまうと、少数部数しか売れないPODで、会社の利益を上げるというのは、かなりの冊数を扱わない限り難しいというのもあります。日本ではそういうベンチャー的な会社はなかなか表れにくいでしょう。私としては、有料でも良いので日本アマゾンが直接手を下して、扱って欲しいと思うのですが・・・。

POD書籍の質

AmazonのPODで出来上がってくる書籍の質はどうなんでしょうか? これは人によって評価が分かれると思いますが、普通の印刷よりは、若干質は落ちると思います。しかし、悪いわけではありません。普通に読むにはまったく何の支障もないです。写真も問題ない程度に印刷されます。印刷は合格点だと思います。

カバー剥がれただ、現在の表紙の質は多少問題があります。表紙はちゃんとPP加工がされているのですが、この接着性に問題があるのか、本棚から何でも出し入れしていると、端っこが剥がれてきてしまい、ちょっとみっともない状態になります。せっかく印刷のほうは、それなりに出来ているのに、この点が何とももったいないですね。(ネットを見ると同様の指摘をしている方がいますので、個体の問題ではないです)

自分の印刷所として使える

PODはもちろん、販売を前提とした制作でも良いのですが、実は自分のプライベートな印刷所としても機能します。一冊からでも制作可能ですから、他人に買わせるつもりが全くなくても、記念や記録として本にしたい、本の形で残しておきたい、など自分や家族のためだけに一冊欲しい、そういう時に簡単に使えます。必要数発注したら、販売停止にも出来ます。従来のオンデマンドプリントでしたら、1冊作っただけでは何万円にもなってしまいます。

もう一つは、独自テキストやセミナー収録を発行するときに大変に便利です。従来ですと、印刷屋さんと契約して、まあ十冊とか、100冊とかある単位で発注します。それが大抵、部数が足りなくなったり、逆に余ってしまったり、発注する部数はいつも悩ましいです。また当然、自分の所にまとまったお金が必要です。そして印刷が上がってきても、場合によって自分で発送作業をしなければなりません。しかし、PODを使えば、作る部数は考えなくて良い! そして生徒さんや参加者に「Amazonから購入して下さい」って言えば、自動的に発送してくれる。主催者としてはこんな便利な話はありません。(だたし、公開されちゃうので、レイキ講習のテキストとかには使えませんね。特定の人だけが購入できるメカニズムはないようです。)

これは革命でしょ!

資金が完全ゼロな一個人が、原稿書いて、普通レベルのPDFを吐き出すことが出来れば、数日で世界的に紙の書籍が販売できる、これは革命でなければ何でしょう? 書店には並びませんが、Amazonから本を買う人は世界中で膨大にいます。

読者にとっても、いままで「一般の人」が買うような内容でないと、紙の本を入手できなかったものが、狭い読者層向けのものでも、ちゃんと書籍として入手できる様になるのは多大なメリットがあります。実際に、「日本と霊気、そしてレイキ」はこの良い1例だと思います。

問題と言えば、まあ有象無象が勝手に、何でもかんでも本にしてしまう、つまりゴミのような本が大量に準備される、そういう問題?はありますが、別に誰が困るわけではありません。数冊しか印刷されないで運命を終わりにするPOD書籍も、少なくないのではないかと想像します。でも、それはAmazonのデータベースを汚すだけです。
出版社の人にとっては、多少苦々しいかも知れません。自分たちは、日々売れて読んでもらえる本を出版するように多大な努力を払っているのに、そうなんでもかんでも本にされては・・と。

私はこれは、単純に手法の違いだと思います。予め、内容を精選して、ある程度以上の良い本を世の中に送るか、まったく一切の制限をかけないで、判断の全てをダイレクトに読者にゆだねるのか。私には両方のアプローチが必要だと思います。

私の使い方

私としては、今後はまず本を出すときは、PODとKindleで出す。販売数を一切気にしないで、出せるので非常に楽ちんです。タイムラグも数日~1週間で済みます。そして、少数でも読んだ読者から意見をフィードバックしてもらえます。また、どの程度の需要があるのかかなり正確な市場データも同時に取れます。

そして、PODとKindleで出したものうちで、販売数がある程度見込めるものを、出版社に掛け合って、普通の書籍にしてもらう、こういう戦略で行こうと思っています。

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